本校でプログラミングの授業を担当されている、賀川邦彦先生へのインタビューを掲載します。
プログラミングとの関わり
今日はよろしくお願いします。まず始めに、ゲーム業界やプログラミングとの関わりをお聞かせください。
「学校を出てレコード会社に入社しました。入社後数年は営業職でした。その後に新設されたコンピュータソフト(おもにゲーム制作)部門に移り、制作担当をしていましたが、どうしても自分でゲームを作りたくて、ゲーム制作を行うベンチャー企業に移りました。その後は、映像制作の会社や、ゲームクリエイター養成のための会社を経て、プログラミングを請け負う事業者として活動していました」
最初はプログラミングの仕事ではなかったのですね。
「はい、実際にプログラミングを行う仕事ではなく、売れるゲームを提案して発注し、宣伝、販促の企画をして売上を上げていくという仕事でした。プログラムについては、発注する側でした」
プログラミングの仕事に行きついたのはなぜですか。
「プロデュースとかディレクションの仕事は、どうしても『靴の上から足のかゆいところをかく』感じがあって、完全に自分の思いを伝えることが難しかったのが理由かと思います」
プログラミングの実力をつけるのは大変ではなかったですか。
「学校は理科系の学校で、プログラミングの講義を受けていましたし、エンタメ系でなければ、プログラミングの会社に就職しようと思っていましたので、ものすごく大変ということはありませんでした」
ゲーム業界の現状について
現在のゲーム業界をどうみておられますか。
「一昔前、家庭用ゲーム機でもパソコンでも、どんどんゲームが高度化、複雑化、高価格化してユーザーを減らす方向に進んでいました。現在は、スマホゲームの普及によって、様々なところでゲームを楽しむことができる環境になり、ゲームに対する関わり方の多様化やゲームをしたいというユーザーの数の増加続いていると思います」
そうなると、ゲーム業界は今後もどんどん伸びていくことになりますね。
「うーん、それについては返答が難しいです。ゲーム業界という定義がどんどん変わってますので」
−と言いますと。
「たとえば、スマホゲームは間違いなくゲームのメインストリームですが、IT業界の方からみると、WebサービスのようなIT分野の1つなんです。教育などにもゲーム的な要素が入って来ていることを考えると、従来のゲーム業界の概念では語れない状況になっています。ですからゲーム業界をめざす人も、既存のゲーム会社に入ることばかり考えず、広い視野で考えていくことをお勧めします」
ゲーム業界で働くにはどんな人が向いていますか。
「今やゲーム業界で働く、と言っても、いろいろな職種があります。当校は、プログラミングを中心にしたゲーム制作全般を学ぶ学校ですので、そこに絞ってお話すると、自分が常にワクワク、ドキドキした気持ちを持って作品を作れるかが重要だと考えています。
なぜなら、どんなゲームでも企画書や仕様書にすべてを書き表すことは不可能です。また、そのとおりに作って面白いとも限らない。ゲームの企画に沿って、足りないところを補う技量が必要になります。そういうことができる人が向いていると言えると思います」
「但し、ゲーム制作の世界は、競争の激しい大変な世界。しかもモノを作ることはラクじゃありません。反面、『白分が苦労して作った作品を誰かが楽しんでくれている』という、サラリーマンでは得られない大きな満足感があることも事実ですので、がんばっていろいろと勉強して、ゲームの仕事ができるようになってください」
今後のゲーム業界について
今後のゲームはどんな方向に発展していると思いますか。
「コンピュータの発展でゲームの世界は飛躍的に拡大しました。そのひとつの方向牲として、多くの人数が集まりコミユニケーションそのものを楽しむゲームがあると思います。通信の発達も考えると、一人で機械と対話するばかりではなく、仲間とコミュニケーションを取りながら進めていくゲームにも大きな可能性があるのではないでしょうか。
AI機能のあるコンピュータを活用しながら、コミュニケーションを図れるゲームを楽しめたら、とても楽しそうですね。
それには、AI的なプログラムだけではなく、まったく別の技術が求められるかもしれません。どんな技術が必要になるかを予想することは困難ですが、どんな技術も現在の技術を土台にして現れるものですから、現在の技術をしっかりと把握しておくことは重要です。」
「いづれにしても、これまでのゲームの概念をひっくり返すくらいの、新しい発想が今後ますます必要になってくるでしょう。正直、私のような年配者よりも、これから入学してくるみなさんに、新しい遊び方、遊び文化の提案していただきたいと考えています。こうやってみんなで遊びましょう、こうやって遊んだら楽しいよ、という提案を期待しています。そしてそれを、これからの若い皆さんに制作していってほしいと思います。
入学してくる生徒さんに
では、これから入学してくる生徒さんにひとことお願いします。
「みなさんの頭の中には、あんなこともやってみたい、こんなゲームを作りたい、コンピュータの能力を限界まで引き出して、こんなこともやってみたいという、いままでの概念にとらわれないいろんなアイデアが渦まいているかと思います。
それらが実際の形になったときに突然一つの世界が形成される。そんな瞬間の喜びを味わうために制作者という人たちは、モノ作りを続けているといっても過言ではありません。何はともあれ、とことんやってみることです。
考えているだけという状態が、一番良くないです。高校時代のエネルギーって、もの凄いものがありますから全力でやってみることが、大切な財産になると思います」
「私の講義ではこうしたこと気持ちを伝えていくことはもちろん、実践的なことも重視して教えていきたいと思っています。現場で使われている生の技術や知識を、どれだけ学生に伝えていけるかを常に考えて、授業していきますので、よければいっしょに勉強しましょう」
どうもありがとうございました。
「いえ、こちらこそ」